ハイブリッド型授業
目次
■ハイブリッド授業とは
一般的には、対面授業とオンライン授業を組み合わせて実施する授業を意味します。ただし、大学によって定義は異なるようです。本学では、「対面授業とオンライン授業(オンデマンドでの個人学習を含む)の併用」となっています。幅広く解釈できますので、オンライン授業と対面授業のどちらかが主ということもなく、リアルタイムとオンデマンドの組み合わせに限定されるということもありません。授業目的や学習目標を考慮して最適と考えられる組み合わせを使うことになります。なお、今般のコロナ禍において、本学では対面授業を行いつつ、感染拡大の防止や学習機会の担保のためにハイブリッド授業を実施することになります。
■ハイブリッド型授業の要件
ハイブリッド授業そのものに対しては、オンライン授業やeラーニングを含む「メディアを利用して行う授業」のように、文科省から満たすべき要件は出されていません。ただし、多くの場合は対面授業とオンライン授業(メディアを利用して行う授業)が組み合わされると思われますので、その場合は、オンライン授業(メディアを利用して行う授業)の要件を満たす必要があります。
平成13年文部科学省告示第51号(大学設置基準第二十五条第二項の規定に基づく大学が履修させることができる授業等)
通信衛星、光ファイバ等を用いることにより、多様なメディアを高度に利用して、文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもので、次に掲げるいずれかの要件を満たし、大学において、大学設置基準第二十五条第一項に規定する面接授業に相当する教育効果を有すると認めたものであること。
一 同時かつ双方向に行われるものであって、かつ、授業を行う教室等以外の教室、研究室又はこれらに準ずる場所(大学設置基準第三十一条第一項の規定により単位を授与する場合においては、企業の会議室等の職場又は住居に近い場所を含む。以下次号において「教室等以外の場所」という。)において履修させるもの
二 毎回の授業の実施に当たって、指導補助者が教室等以外の場所において学生等に対面することにより、又は当該授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかにインターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されているもの
■ハイブリッド授業の形態(非推奨のものも含む)
授業科目ごとにオンライン・対面・ハイブリッドを選択 (選択型)
実験科目・実習科目は対面、座学はオンライン等
1つの授業科目内で対面実施する回とオンラインの回を分ける (選択型/ブレンド型)
導入回と試験が対面で実施、それ以外の回はオンラインで実施、等
対面で実施する授業をオンラインでも配信(生放送)(併用型/ハイフレックス型)
対面授業をカメラ・マイクで録画して同時にWeb会議システムで送信
リモート受講生はWeb会議に参加
対面授業を録画しておき、のちにオンデマンド配信(併用型)
対面授業をカメラ・マイクで録画、後日配信
リモート受講生は録画授業を視聴
■授業に必要なものと利用可能なツール
講義スライド等の資料
講義スライド等の資料は、LMS(ISTU, Google Classroom)を利用して公開可能です。
Web会議システム
Google Meet、Microsoft Teams等が利用可能です。
Google Meet は 2020年9月30日以降、参加者の上限が100名となります。また、2021年内には録画機能に制限(保存期間30日、録画ファイルのダウンロード不可)が加わります。
Microsoft Teams は最大300名、24時間までの利用が可能です。また、録画が可能です。
Google Meetへの参加者名簿は 東北大学 Meet 参加者確認アプリ から確認できます。
小テストや確認クイズなど、学習成果を確認するもの
LMS(ISTU, Google Classroom)を使用して、小テストや課題を出題可能です。
電子掲示板など、意見交換、議論、質疑応答が可能なもの
ISTUでは、電子掲示板で対応可能です。
Google Classroomでは、資料や課題毎にコメント欄が設置されていますので、こちらで対応可能です。
■ハイブリッド型授業構成の例
ハイブリッド授業はその形態によってさらに細分化することもありますが、本学は「対面授業に出席できない学生へも配慮する」ことになっていますので、出席できない学生への配慮を対面授業と同等のものと考えた場合、実際に利用できる授業形態は限られてきます。また、「対面授業に出席できない学生」は、言い換えれば「オンラインでの受講を希望する学生」でもあります。
① 対面授業を実施しつつ、同時にオンライン受講生へリアルタイム配信する
教員は教室で授業を行いますが、学生は教室参加とオンライン参加のどちらでも選択できる形態で、通信制大学でも採用されています。ただしこの場合、教員は教室にいる学生とオンラインの学生の両方を意識した授業を展開する必要があります。そのため、新たな授業の実施技術が必要になりますが、対面授業とオンライン授業に対する学生の意見はどちらが良いという一方的な結果は出ていませんので、学生自身が選択できるという意味では理想的なハイブリッド授業の形態とも言えそうです。
ただし、通常の教室での対面授業を主とした場合は、配信機器が整っている教室とサポート人員が必要になりますので、実施の敷居は高くなります。簡易的には、オンライン会議ソフト(ZOOM等)を活用した対面授業のリアルタイム配信を主と位置づけ、希望する学生が教室で受講するという形が考えられます。教室参加の学生は、目の前に教員がいる状態でオンライン授業を受講していることになります。テレビ局の生放送をスタジオで視聴している状態と同じです。
② 対面授業時に録画しておき、授業終了後、オンデマンドビデオ教材として配信する
対面授業を欠席した学生のキャッチアップ学習用としての利用が想定されます。ただし、対面授業終了後に配信されるため、リアルタイム性に劣ることと、教室の学生に向けて実施した授業の録画であるため、オンライン受講を希望する学生すなわち録画配信のみで学習する学生は傍観者になりやすいデメリットがあります。一方で、対面授業を受けた学生の復習用にも活用できるというメリットもあり、①の方法にこの録画配信を加えることができれば、より充実したハイブリッド授業となります。
③ オンデマンド授業と対面授業を適宜組み合わせる
①、②がリアルタイム授業を想定しているのに対し、こちらは主にオンデマンド授業を想定しています。教員による直接指導や集合研修など、対面授業の必要性に応じて、対面授業をオンライン授業へ組み込むことで実施します。基礎知識の習得などはオンラインで実施し、実技指導や演習、対面のプレゼンテーションなど、対面要素が欠かせない場合に対面授業を実施します。
この場合も②の録画配信など、対面授業に出席できなかった学生への配慮は欠かせませんが、対面要素が必要であるために実施する対面授業ですので、補講など個別に対応する必要もあります。
さらには、対面とオンラインの組み合わせを、より柔軟に組み合わせることによって、今般のコロナ禍への対応(感染拡大防止と学習機会担保)が可能になります。例えば、講義をオンライン授業(オンデマンド)で実施することにより、実験などの対面授業を学生全員が同日実施するのではなく、グループごとに対面授業の日程を変えることもできます。
■ハイブリッド型授業実施にあたっての注意点
◎ オンライン授業で学生を孤独化させないために
特に今年度の1年生においては、学生の孤独化が思いのほかクローズアップされています。そのためオンライン授業を主とする計画の場合は、第1回授業、あるいはできるだけ早い時期の授業回で対面授業を実施しておくことをお勧めします。この対面授業回の目的は、学習する仲間作りや学習チームを作ることです。対面での交流を持った後にオンライン授業を実施することで、その後のオンラインでのグループワークなども円滑に進みやすくなります。また、コロナ禍のような緊急事態における授業のオンライン化は避けられませんが、その際の孤独化は学習モチベーションの低下となる学生もいますので、特に、自ら学ぶ力を十分に身につけていない低年次学生や、入学間もない初年次学生が対象の場合は、その後のオンライン授業での学びが継続できるように、対面授業を適宜に組み込むことをお勧めします。
◎ 全般的な注意点
対面授業の際、教員は必ずマスクを着用する等、教室内での感染が生じないよう、十分に配慮する
出入りの際の消毒、指定された席の使用等、教室での感染防止策の励行を学生にも徹底する
発熱や体調不良等で出席できない学生も想定されるため、対面型の授業を実施する場合でも、オンラインでの受講または補習を可能とする
教室等で収録や配信に用いる機材・ソフトウェアは早めに準備し、事前にリハーサルを行うなど、現場での実使用に慣れておく(一部の機材は、注文が殺到し、入手が困難との情報もある)
映像配信の品質が、黒板やホワイトボード、プロジェクターの文字が読めるものになっているかの確認
別途、LMSを通じた資料の提供もご検討ください。
◎ 選択型の注意点
授業日・科目によって「対面のみ」「オンラインのみ」があることで、学生にとっては同じ日に異なる形式の授業を受講する可能性が生じる
対面とオンライン授業が連続する場合の受講方法の保証
キャンパス内でオンライン授業を受講できる部屋の確保
感染(疑いを含む)によって対面授業が受けられない学生への対応
◎ 併用型(ハイフレックス型)の注意点・問題点
対面で受講する学生と、オンラインで受講する学生の双方に、質問やフィードバックの機会が与えられるよう配慮が必要
授業のオンライン配信がリアルタイムの場合、オンデマンドの場合それぞれで検討が必要です
【生中継で実施する場合、音声配信が特に問題になる】
気を付けないとハウリングやエコーが起きて授業が不可能になる
教員の音声が受講生のスピーカーから再生され、それを受講生のマイクが拾って増幅する
しゃべった音声が少し遅れて何度も聞こえたり、耳障りな雑音が聞こえたりする
■教室での授業のハウリングと対策
◎教室でWeb会議システム利用時は、ハウリングが起きやすくなる
通常のWeb会議システムではハウリングが起きにくくなっています:
会議システムにハウリングキャンセラーが入っていて、自分のスピーカーから出た音をマイクで拾いにくくしている
参加者がヘッドフォンを使えばハウリングは起きない
ところが、教室でWeb会議システムを使う場合、ハウリングが起きやすくなります:
Web会議システムに内蔵されたハウリングキャンセラーは、教室の音響システム(マイク、アンプ、スピーカー)を使用した場合、効果が著しく減退する
◎ ハウリングが起きないようにするには
音の流れを一方向(教師→学生)のみにする
対面授業の配信をオンデマンドのみにする(推奨)
対面授業をリアルタイム配信する場合には、学生は全員ミュートして、学生からの質問はチャットのみにする
教室の音響システムにハウリングキャンセラーを入れる(非推奨)
講義だけでなく音響システムのオペレーション(人の配置)が必要になる
■よりよいハイブリッド型授業のために
併用型(生中継)で実施される授業の場合、オンラインで参加する学生に、音声と画像を必ずミュートしておくよう指示してください。
黒板等への板書やスクリーンへのスライド投影をカメラで撮影して中継または配信する場合、画面から見えづらくなることがあるため、学生に提供可能な講義ノートやスライドのコピーがある場合は、LMSに掲載して頂くことをご検討下さい。
通信品質の変動等で聞き逃してしまった際や復習の際に参考となるよう、録画したビデオやポイントとなる重要な個所の説明を、資料として掲載して頂くことをご検討下さい。
履修学生の負荷と授業の単位数を勘案し、課題量に配慮願います。
■関連資料・参考
ブレンディッドラーニングとの違い(参考)
ブレンディッドラーニングは、形態としては集合研修(集合授業)と個人学習を組み合わせたものです、多くの場合、個人学習はビデオ教材などのオンライン学習(eラーニング)で行われるため、対面授業とオンライン学習の組み合わせと言われることもあります。代表的な例として反転授業(反転学習)があります。ハイブリッド授業の一種とも言えますが、ブレンディッドラーニングは、学習効果を高めるための手段として授業デザインされます。反転授業(反転学習)(参考)
学生が集うことによって実施される学習活動(議論や協働作業等)のために、事前に知識の習得を済ませておくことで、授業時間内に講義を行うことがなくなり、議論や協働作業等に十分な時間を割くことができます。いわゆるアクティブラーニングであり、高い学習効果も期待されます。また、事前に知識習得を済ませておかなければ、授業に出席しても議論や協働作業に対応できないため、学生の予習に対する意識は高くなり、授業時間外学習時間の増加にもつながります。