ChatGPT等の生成系AI利用に関する留意事項

(教員向け)

文責:デジタル教育アドバイザリ・グループ(座長:青木孝文理事・副学長)
(初版:2023年331日、最終更新日:2023年8月30日)

このページでは、教職員向けに、ChatGPT等の生成系AI利用に関する留意事項や関連情報を提供いたします。学生向けの留意事項はこちらです。

はじめに

近年、人工知能(AI)技術の発展はすさまじく、データの分析や機械の制御などに使用される形式のAIだけでなく、デジタルの画像や動画、音声や音楽、文章やプログラムコードなどのテキストを生成するAI(生成系AI、対話型AI)が登場し、誰でも手軽に利用できる環境ができつつあります。画像を生成できるAIの「Stable Diffusion」や、テキストを生成できる「ChatGPT」などがその代表です。

インターネットを利用する上でGoogle検索が不可欠になったように、ChatGPTなどの生成系AIも、今後我々の生活に確実に入り込んでくることが見込まれます。既に、生成系AIは分野によっては実用化され、業務の効率化に貢献しています。また、今後は専門性の高い生成系AIも出現するでしょうし、PCやスマートフォンの標準機能として搭載され、誰もが気軽に利用できるようにもなるでしょう。現に、MicrosoftはWindowsおよびEdgeブラウザの標準機能として生成系AIを搭載し、順次、利用者に提供していくことをアナウンスしています。

ChatGPT等の生成系AIが教育現場でプラスに活用されることも考えられますが、一方で、多くの学生がレポート作成等に利用することで、従来の演習課題やレポート課題による教育効果が十分に発揮されなくなったり、適切な成績評価ができなくなるという懸念も生じます。

教員は、このような生成系AIにどのように向き合うべきか、あらかじめ検討しておく必要があります。

教育・学習における生成系AIに関する留意事項

演習課題やレポート課題における予想される懸念

生成系AIが、Google検索同様我々の生活に入り込んでくるとすれば、その利用を完全に禁止することは困難です。授業時間や試験の際に禁止できたとしても、授業時間外の利用を排除することは現実的ではありません。

生成系AIを使うことで、小論文や要約、英訳や和訳、プログラミングなど、分野によってはかなり正確な出力結果が得られることも多くあります。レポート課題によっては、そのままでも正解と判断できてしまう出力結果が得られるため、学生が生成系AIの出力を少し修正して提出してきた場合、それと見抜くことは難しいという問題が生じます。また、使用が疑われたとしても、それを断言することは困難であると考えられます。

以下は、無料版のChatGPTを使い、架空の授業課題を解いた例です(画像をクリックすると拡大)。多くのケースで、精度の高い回答を出力することがわかります。

例1

例2

例3

生成系AIの出力結果は、英語、日本語問わず、自然な文章となっており、一見して、人が書いたものか、生成系AIによる出力なのか区別がつかない場合が多くあります。レポート課題やプログラム課題によっては、学生がまじめに取り組んだ末のレポートより、生成系AIの出力をほぼ丸写ししたようなレポートの方が正解に近い場合もあり、学生自身の学びの促進や厳格な成績評価の点で大きな問題が生じることが懸念されます。


生成系AIへの対応方法案

上記のような懸念に対応するには、教員自らが、生成系AIに何ができて何ができないのかを知った上で、生成系AIとどう向き合うべきかを考え、部分的に禁止するなり注意喚起するなり活用していくなりするのがよいのではないかと思われます。

例えば、多くの学生が使用することも想定した上で、必要に応じて以下のような対策を講じることが考えられます。


注意喚起する


課題内容や出題方法を工夫する


ただし、上記はあくまで一例です。授業内容に照らし、どのように対応すべきかはそれぞれの授業によりますので、ひとつの参考としてください。


補足

生成系AIが書いた文章と人間が書いた文章を識別するためのツールの開発も行われています。例えば、ChatGPTを提供するOpenAIも識別ツールを提供しているようですが、十分な精度ではないともされているため注意が必要です。

まとめ

だだし、生成系AIの利用が、教員の授業支援や学生の予習・復習など、さまざまな場面で教育や学習を効率化し、生産性を向上させる可能性もありますので、本ページの留意事項がひとつの参考になれば幸いです。

その他の注意点(研究インテグリティ、サイバーセキュリティ等)

本ページは、教育・学習の場面でChatGPT等の生成系AIを利用する際の留意事項について述べたものですが、教育・学習以外の場面でも気をつけなければならない点がありますので、以下に補足説明します。

研究インテグリティの観点から

研究を遂行する上で、未発表の研究成果をインターネットのクラウド上に保存したり、研究支援の用途で生成系AIや翻訳サイトを利用したりすることが考えられます。そうした場合、サービス提供事業者に、部分的にまたは完全に、未発表データが意図せずに流出してしまう点が懸念されます。また、生成系AIや翻訳サイトへの入力が学習データとして利用されることで、他の利用者への回答として提示され、情報が漏えいする懸念もあります。十分にご注意ください。

サイバーセキュリティの観点から

機密情報についても同じことが言えます。入試に関する情報や学生・教職員の個人情報など、外部に漏らしてはならない情報が、生成系AIなどを通じてサービス提供事業者に伝わってしまうリスクや、他の利用者への回答として提示されてしまうリスクがあることを知っておく必要があります。

その他、教育・学習以外の場面での注意事項に関して、別途大学から通知等がされることも考えられますので、その点もご留意いただけますようお願いいたします。

関連情報

以下は、ChatGPT等の生成系AI利用に関連した情報です。


上記「その他の注意点」で述べた通り、生成系AIを使用すると入力が学習データとして使用されるおそれがあります。ChatGPT等を提供しているOpenAIは、ウェブ版のChatGPTとDALL-E からの入力を学習に使用しないよう、「オプトアウト(opt-out)」する申請を受け付けています。ご自身の利用方法に応じて、必要性をご検討ください。

ユーザが入力したデータの利用に対するOpenAIの説明 https://help.openai.com/en/articles/7039943-data-usage-for-consumer-services-faq
上記説明に含まれるオプトアウト申請フォーム https://docs.google.com/forms/d/1t2y-arKhcjlKc1I5ohl9Gb16t6Sq-iaybVFEbLFFjaI/viewform?ts=63cec7c0&edit_requested=true


上述のオプトアウト申請を行っていない場合、ウェブ版のChatGPT上で開始した「New Chat」の内容は、会話の履歴に保存され、モデルのトレーニングに利用されます。この点に関して4月25日から、各ユーザの「Settings」で、「Chat History & Training」の設定をオフにすることで、会話を履歴に保存せず、モデルのトレーニングにも利用させないことが可能になりました。会話の性質に応じて活用してください。

他大学の取り組み例

海外大学

以下の記述は【参考リンク】を抜粋・要約したものです。詳細については、リンク先を確認してください。


ChatGPTなどの生成系AIの利用を部分的にまたは完全に禁止する


別方向からのアプローチ

【参考リンク】

以下のリンクは、POD networkと呼ばれるアメリカのFD専門家団体による公開メーリングリストで収集されたリストです。原文はこちらを参照してください。


国内大学(公表順)

国内大学の動向については、以下のサイトによくまとめられており、参考になります。

関連リンク

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