オンデマンド型授業

■オンデマンド型授業とは

 学習管理システム(LMS: Learning Management System)等を利用し、教員が用意した教材をもとに学生が個別に学習します。学生は、学習管理システム等にログインし、オンデマンドに受講(自分の好きな時にインターネットにアクセスして講義映像や講義資料等を用いて受講)します。
※従前、講義資料型としていたものもオンデマンド型に含まれます。

■オンデマンド型授業の要件

 教室での授業やリアルタイム型授業(同期型授業)とは異なり、オンデマンド型授業は非同期型授業となりますので、次の要件が必要になります。

(参考)大学における多様なメディアを高度に利用した授業について

■授業必要なものと利用可能なツール

■オンデマンド型授業の一例

毎回の授業

期末課題(必要に応じて中間課題など)

講義ビデオの制作方法の例

講義ビデオの作成方法PowerPointを使い、スライドショーの記録→エクスポート→ビデオの作成  (macOSのKeynoteにも同様の機能があります)

講義ビデオ作成時のポイント講義ビデオを作成する(ひとりで簡易に作る)もご覧ください。

■オンデマンド授業のポイント

オンデマンド授業、特にLMSを使ったオンデマンド授業では従来の教室授業をLMS上に再現はできますが、闇雲に教室授業の再現を目指さないことも大切なことです。

多くの場合、事前に録画したビデオ講義や講義スライド、講義ノート等をLMSに載せることでオンデマンド授業は作られています。一方で、LMS は従来の教室授業の設計を超えるための柔軟性を持っています。多数の学生の自動採点や、レポートの相互採点など、対面授業では時間と手間が掛かりすぎて実現できないこともLMSを利用することで実現できます。また、オンデマンドであることのメリットを生かし、ディスカッションボードを使えば熟考した議論を行うことも可能です。

ここで重要なのは、オンデマンド授業において教室授業(対面授業)を再現することが目標にならないことです。授業の目標は、あくまでもシラバスにある「学習目標」です。学習目標を達成するために、どのような授業設計とすべきかを考える必要があります。つまり、これまで対面授業で達成していた学習目標をオンデマンド授業で達成するためには、どのような授業設計が必要なのかを改めて考える必要があるということです。これは登山に似ています(教員の場合は登山ガイドが相当します)。目標(ゴール)である山頂を目指し、いつも利用している登山ルートを使っていた人が、その使い慣れたルートが封鎖されたため、別のルートを使って登頂を目指します。この際、登山ルートが変更になりますから、装備を含めた登山計画はこれまでとは違うものになります。教室授業とLMSよるオンデマンド授業も同様のことが言えます。

 

例えば、MOOC(大規模公開オンライン講座Massive Open Online Course) のビデオ教材による学習はリアルタイムではありませんが、できるだけ現実感を出すように工夫して編集されます。従来の対面授業では、この現実感は当たり前すぎて意識されませんが、遠隔教育、特にオンデマンド授業においては、「教員がそこにいる」と感じられることが非常に重要な要素になります。これは、画面に教員の映像が出ていることだけを意味するのではなく、電子掲示板での議論のファシリテーションや質疑応答など、学生とのインタラクションを含めてのことです。


指定図書や資料が示され、課題のみが与えられる形式のオンデマンド授業は、学生の満足度が低くなることが予想されます。最近、ニュースなどでも「大学のオンライン授業の質が低い」との学生の意見が出てきていますが、そのような学生が受けている授業は課題やレポートのみが与えられる、自ら学ぶ力が要求されるタイプのものが多いように見受けられます。「まるで通信教育だ」という批判もここに起因していると思われます。

もちろん、指定図書や指定論文を読み、レポートを提出することで構成されるオンデマンド授業も多く存在します。ただし、これは高年次生や大学院生を対象にした場合であれば有効に機能することが期待できますが、自ら学ぶ力がまだ身についていない1年生などは、放置されているという感覚に陥る可能性があります。

そのため、授業は学生をゴール(学習目標の達成)へ導くための活動であると考え、十分な質疑応答機会の確保や、初年次教育の要素を含めるなど、対象学生に合わせた授業を設計する必要があります。


 教室での授業を収録し、その日の夜または翌日に配信するという形式もよく利用されます。この場合、教室での授業に出席した学生の復習用として活用することが有効です。また、その回を欠席した学生が自宅等でキャッチアップ学習するためにも有効活用できます。コロナ禍のような緊急事態の際には、昨年収録したものを活用することも考えられます。

 しかし、平時においては、昨年収録した教室授業を次年度の異なる学生にオンデマンド授業として使う場合は状況が異なってきます。教室での授業は昨年の学生に向けて行われたものだからです。今、目の前にいる学生を相手に実施した講義の録画と、画面の向こう側にいる学生を想定して録画したビデオ講義では、教員の話し方や講義スタイルも変わってきます。前者は、実際に授業を受けた学生の復習用には有効ですが、その授業を受けていない学生(たとえば次年度の学生)は、おのずと傍観者の立場になってしまいます。それであれば、対象(たとえば1年生全般)を想定したビデオ教材をあらかじめ作成しておく方がよいでしょう。MOOCや放送大学の授業がこれに相当します。

■よりよいオンデマンド型授業のために